どうです?
何がってホントにどうなんです?どうなってるんですか、暑すぎないです?
暑すぎてTシャツとかもう全部脱ぎ捨ててパンツ一枚になって、どうしようかな、脱ごうかな?でも脱いだらヤバイよな、とりあえず落ち着いて冷凍庫の中を何食べるんでもないのに開けたり閉めたりして、「あ~・・やっぱ何も入ってないやー」って流れで冷蔵庫開けたら「そっかそっか、そうだよさっき5分前にあけてろくなもんねぇつって閉めたばっかじゃん」って中にあった三ツ矢サイダーを飲んだら「炭酸きつ!!」ってなって口の中泡だらけじゃねーかよ。ぜんぜん喉うるおせねーよ・・。
ってなるわけですけど、
なんなんですかね、あの三ツ矢サイダーの炭酸は。
「炭酸が強すぎて乾ききった喉が中々潤せない。」
三ツ矢サイダーを飲む者なら誰しもが思うことだ。
今回難問に立ち上がったのは、都市近郊部にひっそりと構える小さなWEB開発研究所のメンバー達だった。コンピューターなどによる情報システムが普及し、一般市民の生活や企業活動に浸透した情報化社会が加速する中、「技術はあるが、提供する場所がない。」そう伸び悩んでいる企業がここにあった。
「僕たちの技術を生かす道はどこにもないのか。」
僕たちの持っている技術を最高の形で世に送り出したい。これは、そんな夢を追い続け、一瞬、一瞬を精一杯生きる若者たちによる戦いと友情のドラマである。
彼らは、毎日行われる15分間の社内ミーティングで
クリエイティブな発想を生み出す選ばれたメンバー達だった。
<前園 大明
「振って気を抜くなんてダメだ!!!!!!
開けた時に溢れてテーブルや床が汚れるし・・
何より炭酸である必要がなくなっちまうじゃねーか!!」
<内山 章
「僕も振って炭酸を抜くのには反対かな。
代案があるわけじゃないけどさ。」
<十文字 清士
「じゃあどうしろってんだ!!!
マックのコーラだって気が抜け始めた頃が飲み頃って奴だっている!!
俺は俄然、振る派だぜ!!振って振って振りまくれ!」
<百合子 ステイシー 高梨
「ちょっと落ち着きなさい。争っていても何の解決にもならないわ。
ただ、汚れるのは私も嫌だし、振る方法は現実的ではないわね。」
彼らには皆、同じ願いがあった。
「三ツ矢サイダーの炭酸を、和らげたい。」
炭酸が苦手な、前園たち。しかし美味しい三ツ矢サイダーが飲みたい。
炭酸を和らげ、グビグビと勢い良く飲み、みなで楽しい時間を
サイダーと共に分かち合いたい。
明日の行方も見えず、みな頭をかかえた。
ある日、開発研究所に、一つの依頼が舞い込んだ。
依頼主は、『シチリア果物園』
シチリア果物園は、全世界に向け、果物を中心に出荷していたが、
今年から業務拡大に向け、果物ゼリーや、健康飲料などの
販売を企画していたのであった。
「このレモンを使って・・・
何かを、開発してくれないか。」
前園たちは、戸惑った・・。
<十文字
「えっ、レモンが・・なんて?
マジーー、何考えてんの、うちWEB屋なんだけど。
ドリンクなんか作れるわけねーだろっての。」
<ゆり子
「誰がとってきた案件か知らないけど、今回のこれはパスね。
ECならまだしも、食品開発なんて、ASPですらできっこないわ。」
彼らが持っている技術のほとんどは、WEBを使うことばかりだ。
もちろん製品開発など、もっての他である。
「今回の依頼は、断念しよう」メンバーの誰もが諦めかけていた時、
前園、ただ一人は、意外なところに目をつけていたのだ。
<前園
「みんな、聞いてくれ。このレモン、とてつもなく美味いぞ。
いや、厳密にはレモンじゃなく、レモン果汁を入れた三ツ矢サイダーがうまいんだ。
・・そ、そうか!!レモンだったんだ!!レモンだったんだよ!!」
「三ツ矢サイダーと、レモンを合わせてみてはどうか?」
前園の閃きが、メンバーに1つの兆しを見せた。
<内山
「な・・・なんだ・・炭酸が・・和らいでるじゃないか!!
前園!!大発見だよ!!やっぱお前はすげー奴だ!!」
<ゆり子
「うそー!こんな三ツ矢サイダー初めて飲んだわ!!
これで私達の問題も全て解決じゃない!ゴクゴクゴク」
<前園
「うおおおおおおおおおお!!!!
うっめえええええええーーーーーー!!!!
レモン果汁最高ーー!!ウヒョー!!!ドババババ」
あれほどまでメンバーを苦しめ続けた三ツ矢サイダーだったが、
たった1つのシチリアレモンが伸び悩む彼らに1つの希望の光を注いだ瞬間であった。
「レモンが、サイダーを変える。」
水を得た魚のようにはしゃぎ歓喜をもたらした前園たちだった。
しかし、皮肉にもこの製法には、意外な落とし穴があったのだ。
<内山
「だめだ・・!
やっぱり、5分経つと炭酸が完全に抜けてしまう。
これじゃあ、ただのレモン水だ。
<前園
「まて、落ち着け。なにか、理由があるはずだ!
レモンの成分に炭酸を消してしまう何かが含まれていると考えるのが普通だ。」
<ゆり子
レモン果汁を入れた時の三ツ矢サイダーの気持ちになってみたらどうかしら?
「痛い、痛い」私には炭酸がそう言っているように聞こえるの。
<前園
そうだ、ふたりとも、イメージするんだ。
シチリアのレモンはどう育つ?誰が作る?炭酸とはなにか?
やるんだ!!製法から考えて、イメージするんだ!!」
前園の熱意は、伝わった・・・。
彼らが再び、夢に向かって走りだした瞬間である。
<よしてる
フフッ。
あいかわらず・・っすね。・・先輩!
<前園
よし、てる・・・お前、よしてるなのか?
<内山
よしてる・・だと??
き・・貴様!!いまさらになって、どの面下げにきた!!
この裏切りもんが!!
<前園
いいんだ。内山、よしてるは悪くないんだ。悪いのは・・・いや、
と、とにかく、よしてる!
元気だったか?
<よしてる
まあまあ先輩たち、落ち着いて。
さて何から話そうか・・。
【よしてる】
かつて、前園と共にWEBサービスの開発に勤しみ、共に信頼関係を築き上げた優秀なパートナーでもあったが5年前から消息不明、伝説の開発者とされていた。
社内でもトップクラスの技術者であったよしてるの復帰により、
三ツ矢サイダープロジェクトも更に躍進すると、誰もが思った。
しかし・・
よしてるの復帰が再びメンバーの歯車を狂わす事態となる。
バシッ!!!
<よしてる
前園先輩、あんたはいつだってそうだ。
目の前の事にとらわれすぎて、つい肝心なことを忘れる。
今の時代、感情と勢いだけで解決できると思ったら大間違いなんですよ。
<前園
お、おい。どうしたってんだ、よしてる。
お前、この5年間で何があったんだ?
<よしてる
それはこっちのセリフですよ。
やっぱり、先輩は知らないんすね。
<十文字
ハッハハハハハ!よっしーさん、もう見せちゃいましょうよ~!!
あいつ何もわかってないっすよ!ブハハハハハ
<前園
じゅ、十文字!お前までどうしたってんだ。(最近見ないと思ったら)
<十文字
ブワァ~~か!お前がのんきにレモンをギュウギュウ絞ってる間に、
よしてるさんは、こんな物を開発してたんだぜ!!!!
これを見よ!!!
『三ツ矢サイダー用レモン果汁 ~ミツヤの一滴100~』
<前園
なっ・・!!バカヤロウ!!!化学成分の力に頼りやがったな!!!
結局お前は製品を作ってお金儲けをしたいだけなのか!!!
見損なったぞバッキャロウ!!たましいまでも・・
<よしてる
ほら~、だから言ったでしょー、十文字さん。
先輩に見せたら絶対怒るって。ハハッやっぱかわってないなー、そういうとこ。
「魂は売るな。」でしたっけ?先輩。
<十文字
ハッハハハハ
かっかする前にまずはこいつを飲んでみることだな、
レモン果汁を入れて3時間経ったこの、三ツ矢サイダーをな!!
<前園
バッ、お前なぁ。3時間も放置したら普通の三ツ矢サイダーですら炭酸が抜けるっつー・・
ゴク・・ゴファーーーーッッ!!!
<前園 内山 ゆり子
な・・・えっ・・バカな・・・。
前園は絶望した。
よしてるの開発した『ミツヤの一滴』は、それはまるで完璧だったのだ。
通常の三ツ矢サイダーでさえ3時間もほおっておけば炭酸が抜けるが、特殊製法で開発された『ミツヤの一滴』を使用したことで化学反応が起こり、半永久的な炭酸状態を保つことに成功したのである。よしてるの常人離れたセンスは、たった5年間で前園をも追い越し、世界を騒がす程の開発者として開花させていたのであった。
<十文字
笑っちまうぜ~!!まさかお前がいまだにレモンを絞ってたなんてな~!!
どうりでレモン臭ぇわけだ!!ハッハハハハハ!!
さささ、いきやしょ!よしてるさん、あんな奴らほっときましょ~
<よしてる
前園さん。あんたが昔の勢いを取り戻すまで待っててあげますから
早いとこ、そんな奴ら切り捨ててこっちで開発しましょう。昔のように・・ね。
スチャ・・(サングラスをかける音)
こうして、よしてるは後を去ったのである。
<前園
「くっ・・・・・・・・・・」
<内山・ゆり子
たしかに僕らが足を引っ張ってるのは事実だし・・
やっぱ特殊製法には敵わないのかもしれない・・。
<前園
弱気になってどうすんだ、お前ら。
化学がなんだ、特殊製法がなんだ!!?大切なのは心・・じゃないのか?
<ゆり子
でも・・私達がやってることは・・・
<前園
もちろん生きていく為にはお金も必要だし、商品を売ることも、
当然大切な事でもある。でも俺は、この心まで売るつもりはない。
魂は売っちゃダメなんだ!
前園がなぜ、ここまで三ツ矢サイダーにこだわり続けるのか・・。
それには、深い理由があった。
昭和63年 【齢70を迎える祖母との感動の想い出】
前園 (3歳)
「うわーーーーーい!!サイダーだ!!!うわーーーーい!!」
祖母(70)
「お前は本当に可愛い子だねぇ(ニコニコ)サイダーうんとお飲み!」
「僕サイダー大好き!!おばあちゃん大好き!!」
「おやおや、嬉しいこと言ってくれるねぇ。(ゴクゴク)」
「そういえばさ!おばあちゃんはさ!
どうしておばあちゃんなのにサイダー飲んでるの??」
「おや?おばあちゃんはサイダーを飲んじゃいけないのかい?
おかしな子だねぇ(ニコニコゴクリ)」
「あとどうしてさ、おばあちゃんはサイダー飲むとき
小指が立ってるの?」
「そんなとこばっか見てるんじゃないよ!!ウフフ・・
(子供はよく見てるもんだねぇ。)」
「うへぁーーー!す、すげーっ!!この指、硬いや!アハハ!
この小指、全然もとに戻らないよ!!アハハハハ」
「そうね。サイダーの炭酸が強くてかしら。
困ったもんだねぇ。もうこの小指は戻らないのかもしれないねぇ。」
「おばあ・・ちゃん? だめだよそんなこと言っちゃ・・
一生懸命やることが大切だって・・教えてくれたの、おばあちゃんだよ!
僕が頑張るから!!だから、諦めないで!!」
「おばあちゃんの小指を戻してあげたい。」
祖母との誓いと、仲間たちの友情が、前園を支えた。
前園は、再び立ち上がり、がむしゃらに、走り続けた。
<前園
俺たちがレモンを絞ってる間に、あいつも努力をしていたんだ。
頑張らなくては。もっともっと、努力を重ねる必要があるんだ!
<ゆり子
よしてるは「絞らなくて良い」というところに目をつけていた。
さすがはよしてる。天才的な着眼点ね。
<内山
レモンの一滴、だっけ?あれってさ、つまり三ツ矢サイダーを飲もうとしたら、
あの製品も一緒に持ち歩かなきゃいけないってことだよね。
それはそれで・・
<前園
内山、そうなんだ。いい所に気がついた。
不便なんだ。あれじゃあ不便。やっぱりこのプロジェクトは
1つの製品として開発する必要があるんだ。
<シチリア果物園
ヘーイ、もっし~~?前ちゃんいる~~?
ちょっと相談があんねんけど!
<ゆり子
前園は今ちょっと・・
(この人こんなキャラだったっけ・・)
<前園
ゆり子!大丈夫だ、かわろう。
<シチリア果物園
あ、前ちゃん?やっと繋がったわ~
アイホン意味わかんないわマジ!!ブハハハ!
つーかどんな感じ~?モンレーいい感じ~?
<前園
ああ、そのことならご安心ください!
完成まであと一歩ですよ!シチリアレモンを最高の形で送り出してみせますよ。
楽しみにしててください!
<シチリア果物園>
オッケー☆サンキューマイフレン!
あそこまで甘いレモンは、うちにしかできねぇからよ!!!
甘すぎてそのままでも食べれちゃう!って評判なんだぜ、頼むよちゃん前~!
<前園
うんうん!確かにこれ本当にあ・・え!?なんて?
い、今なんて言いました?
<シチリア果物園>
えっとね~~
ローラね~~
わかんないっ☆ウフフ
<前園
「・・・・・・・・・・・・・!?!?」
<シチリア果物園>
だから~、なんつかったかな~
甘味料??ってやつあるっしょ、
あれを使ってないのに、ものすご~く甘くつくれて・・
<前園
そ、そそそそそそれだーーー!!!それだったんだ!
シチリアさん!ありがとうございます!!ガチャ!
<シチリア
「・・・・・」
(な・・何なんだ・・)
深夜2時
「寝ている暇などない。」社内では、緊急ミーティングが開かれ、
前園の閃きは、メンバー達を騒がせた。
<内山・ゆり子
う・・うまい。これ、本当に三ツ矢サイダーなの?
だってレモン、絞ってないじゃん!!
絞ってないのに、どうして!?
<前園
甘味料だったんだ・・。三ツ矢サイダーに含まれた甘味料と、レモンの甘みがぶつかりあって、炭酸が負けてしまっていたんだ。
<ゆり子
なるほど・・。おそれいったわ。
三ツ矢サイダーの甘味料を0にすることで、
微炭酸を長時間維持させることに成功したのね。
<内山
思い切って甘味料を無くしたが、
レモンの甘みがサイダー本来の旨味を支えてくれる。
まさにシチリア産レモンだけにしかできない、奇跡の融合ってことだね。
こうして、シチリア果物園からの思わぬ電話が鍵となり、
前園チームの新商品『三ツ矢ニコニコレモンサイダー』が開発されたのである。
かたや、よしてるチームも『ミツヤの一滴100~』に改良を加え、
「ポッケに入るコンパクトサイズ」や、「ねぎ塩カルビ丼にピッタリレモン果汁」
幅広く使えるレモン果汁製品としてバリエーションを増やし、
さらに中国産レモンを使用することで大幅なコストダウンにも成功した。
前園チームと、よしてるチームの三ツ矢サイダープロジェクトは、全世界を騒がせた。
明治17年 日本初のビンビールを生み出した大日本麦酒株式会社(現 アサヒグループホールディングス)が、「こども達でも飲める美味しい炭酸飲料水はないのか。」という思いから開発された平野水、「三ツ矢サイダー」は、味をかえることなく時代を乗り切ったのだ。
「そんな三ツ矢サイダーを変えたい」と、若者たちが、もがいている・・。
「若いもんに、何がわかるのじゃ」
厳しい意見や、避難する者も多かった。
それでも若者たちは果敢に挑んだ。
サイダー会のシチリア王子率いる前園チームが開発した、
『三ツ矢ニコニコレモンサイダー』か、
生まれ持っての天才カリスマよしてるチームの
『三ツ矢サイダー用レモン果汁 ~ミツヤの一滴100~』か・・。
厚生労働省をはじめとし、三ツ矢サイダー販売元であるアサヒ飲料株式会社、シチリア果物園に、両チームの資料を提出した。
まず最初に目を留めたのは、アサヒ本社販売事業部であった。
「おもしろい、若者たちが・・・いるもんだ。」
提出した資料は、アサヒ本社全体を騒がす事態となり、
早速、三ツ矢サイダー販売事業部から返送の通知とともに、
1つのダンボール箱が若者たちの元に届いた。
「キリン ビバレッチさんがこんな商品を出しています。」
1ケース差し上げます。